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就活生のためのロジカルシンキング講座:実践編①聞く力~話の論点をつかむ

論理的に考え、伝えるために必要なステップには次の3つが挙げられます。

1. 聞く(相手のトピックスをつかむ)
2. 考える(構造的に物事を考え、縦と横の論理をおさえる)
3. 伝える(メインメッセージを伝える)

今回は1番目の「聞く力」についてお伝えしたいと思います。この「聞く力」は後のステップを進めていく上で非常に重要であり、ロジカルシンキングだけでなくコミュニケーション能力においても重要な要素になります。

入門編はこちらの記事を御覧ください:

就活生のためのロジカルシンキング講座:基礎編~論理的思考力とは?
論理的思考力(ロジカルシンキング)についてご紹介。就活(ES、面接)においても今後のビジネスの場面でも必要とされるスキルですが、論理的思考力の本質を理解している方は少数です。今回は入門編としてロジカルシンキングの全体像をご紹介します。

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最適な答えを3つの要素

入門編でお伝えしたように、相手の疑問に対して最適な回答をするためには「現状」「理想」「相手の疑問」の3要素を抑える必要があります。

あなたが友達から「オススメのカフェは?」と聞かれても何が最適な答えなのかわかりません。「今、大学の近くにいて(現状)、友人10人と落ち着いてサークルのMTGができる(理想)カフェを探しているが、どのカフェが最適か(疑問)教えてほしい」と尋ねられればより的確な回答をすることができます。

「現状」「理想」「聞き手の疑問」の3要素を抑える

Exercise1 相手のトピックスを掴む

説明の前にまずは次のケース問題について考えてみてください。

あなたは経営企画部門の担当者です。
非上場メーカーX社の副社長である鈴木氏は、1年前に某銀行から迎えられた管理部門担当副社長です。銀行出身の鈴木副社長は、何よりも健全な財務体質を維持することを最優先にしています。

しかし、副社長就任から半年、自ら陣頭指揮した内部監査で、まったく予期せぬ不良資産100億円の存在が発覚しました。

調べを進めると、この不良資産は10年以上前のある出来事に端を発したもので、それが徐々に拡大していったものであることが判明しました。

鈴木副社長は、右腕である経営企画部門のあなたに今後の解決策を考えるように命じました。鈴木副社長の考える「①理想の状態」「②現状」「③受け手(鈴木副社長)の疑問」「④(③の疑問に対する)答え」についてそれぞれ整理して、あなたなりの解決策を考えてみてください。
『入門 考える技術・書く技術』 山崎康司 P33より

実際に頭を使うことが重要ですので、答えを見る前に皆さん自身で考えてみてください。

 

 

 

 

 

 

(答え)

 

 

 

いかがでしたでしょうか?
実はこの問題には引っかけの要素があります。それは「現状」「理想」「相手の疑問」のが不明確で、聞き手(経営企画担当のあなた)の解釈が別れてしまうのです。

では、どのような回答パターンがあるのでしょうか。大きく分けて2つ、「不良債権そのもの」が話の論点になる場合と、「不良債権の監視体制」が話の論点になる場合の2つがあります。

論点 不良資産そのもの 不良資産の監視体制
1. 望ましい姿 健全な財務体質を維持する
(不良資産がない状態)
健全な財務体質を維持する
(不良資産の見過ごしのない状態)
2. 現状 不良資産100億円が存在すること 100億円もの不良資産の存在が、10年間見過ごされてきた
3. 疑問 どうやってこの不良資産を処理すべきだろうか? どうすれば今後、このような不良資産の見過ごしがなくなるだろうか?
4. 答え この不良資産は〇〇の方法で処理すべきである 今後、このような不良資産の見過ごしを防ぐために、〇〇のシステム導入をすべきである

不良資産そのものが問題であると捉えた場合、望ましい姿は「不良資産が無いこと」であり、現状は「不良資産が存在すること」、疑問は「如何に処理するか」で、あなたの答えは「最適な不良資産の処理方法」について論じる必要があります。

一方、不良資産の監視体制が問題であると捉えた場合、望ましい姿は「不良資産の見過ごしが無いこと」であり、現状は「不良資産が10年間見過ごされたこと」、疑問は「如何に見過ごしを無くすか」で、あなたの答えは「監視体制の強化」について論じる必要があります。

つまり、何を論点ににするかで答えるべき内容が大きく変わってしまうのです。せっかくあなたが不良資産の処理方法について論理的で納得感のある解決法を用意していても、聞き手が「監視体制の強化」を求めていた場合、全くの無駄になってしまいます。

そんなバカな!と思われるかもしれませんが、このような認識のズレは多々起こります。(私も入社一年目は上司の指示を正確に理解せずに仕事を進めてしまい、何度もやり直しをさせられました…)

面接における対処法

このような認識のズレ(論点のズレ)は、面接の場面でも同じことが起こりえます。
面接官側も聞きたいことを明確に伝えられるよう質問の方法については注意をしていますが、それでも論点の不明確な質問をしてしまうことがあります。

その場合は、質問において何を論点にしているのかが明確になるよう、皆さんから確認するようにしましょう
相手の理想と現状を踏まえて、何を論点としているのかを推測し、その質問は「〇〇ということでよろしいでしょうか?」と確認してみましょう。

先ほどの不良資産の例で言えば、まず相手の理想と現実を踏まえ、「どう不良資産を処理するかという解決法についての質問ということでよろしいでしょうか?」と確認します。あなたの認識と合っていればそれに続いて処理方法について語ればよいし、もし認識と違えば相手の論点にあった解決法を提示すればよいのです。

面接ではどうしても「面接官から就活生に向けて一方的に質問をする場」と捉えがちですが、正しくは「面接官とコミュニケーションを取り合いながら自身を知ってもらう場」なのです。
「面接官に聞き返してもいいのかな…?」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、問題ありません。むしろ、しっかりと論点について明確にしながら話を進められる就活生は少ないため、逆に好印象を持たれる可能性が高くなります

社会人の考えるコミュニケーション能力の高い人

学生の間では、コミュニケーション能力というと「相手と仲良くなる接し方ができる能力」というように思われるかもしれませんが、社会人の考えるコミュニケーション能力とは「相手の意図を理解し、簡潔にわかりやすく伝えられる能力」であることが多いでしょう。(もちろん関係構築力的な使い方をされる場合もありますが、対人理解力対人影響力の方が的を射ているように思います。)

聞く(相手の論点をつかむ)のまとめ

相手の疑問に対して最適な回答をするためには「現状」「理想」「相手の疑問」の3要素を抑える必要がある。

通常のコミュニケーションでは3要素(論点)が不明確なことにより、質問側と回答側の認識のズレが発生する場合が多くある

3要素(論点)が不明確な場合は、それらが明確になるよう認識の齟齬を減らす工夫をする

基礎的に思われるかもしれませんが「聞く力」は非常に重要ですので、みなさんも普段の生活の中から相手が何を論点にしているのかを明確にしながらコミュニケーションを取るように心がけてみてください。

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