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「集中リゲイン」のマーケティング戦略を考えてみた

サントリー食品インターナショナルから発売された「集中リゲイン」を題材に、このマーケティング戦略を推測してみましょう。
商品の背後にあるマーケティング戦略を読み解くことであなたのマーケティングの感覚を高めることができます。

マーケティング戦略を分析する意義

マーケティングはいくら教科書で勉強しても実際の活用場面をイメージ出来ないと役立てる事ができません。学問としてのマーケティングを活きたマーケティングにするためには、実在の商品のマーケティング戦略について自身で分析してみるのが一番です。どの商品もプロのマーケターの方々が頭を捻って考え考えぬいた芸術品のようなものです。マーケティング戦略について考えることで、彼らの思考を垣間見ることができ、マーケティングのスキルアップにも繋がります。

マーケティングについて初めての方はこちらの記事も参考にしてください:

就活生のためのマーケティング講座:入門編
就活生が知っておくべきマーケティングの基礎から応用までをご紹介。顧客にものを買ってもらう戦略・仕組みであるマーケティングはビジネスでも活用場面が広く、就活に於いてもこの知識があるとより効果的な自己PRにつなげることができます。マーケティング

※お断り
私はサントリーの社員ではありませんので、以下に記載する内容は私個人の憶測でしかありませんのでご注意ください。

集中リゲインとは?

2015年8月に新発売となったエナジードリンクです。もともとリゲインは第一三共ヘルスケアの商品で1988年に誕生しています。バブル期だった当時「24時間働けますか」というメッセージのCMで知名度をあげました。

一方、サントリーは第一三共ヘルスケアと「リゲイン」の清涼飲料における独占的使用に関するライセンス契約を結び、昨年から7月から「リゲイン エナジードリンク」を発売しています。大元の第一三共ヘルスケアのCMをもじって「3、4時間戦えますか?」というCMを展開したのも話題になりましたね。

サントリープレスリリースにはエナジードリンク市場への進出について次のように記載されています。

エナジードリンク市場は、近年めざましく成長しており、昨年の市場規模は2009年と比較すると約10倍にまで伸長しています。
当社では、(1)30~40代の男性が増分に寄与していること (2)「夜に飲まれる飲料」から「朝に飲まれる飲料」への変化が見られること (3)エナジードリンク飲用者の約70%が栄養ドリンクを併飲していること が大きな成長要因だと分析しています。

こうした背景を踏まえ、栄養ドリンクのメジャーブランドとして確立している「リゲイン」から、「リゲイン」(販売名:リゲインS1、指定医薬部外品)の処方設計や香味設計を参考に当社独自の中味開発・研究開発技術により開発した新しいエナジードリンクを発売します。出勤前やもうひと頑張りしたい時に飲むのにぴったりの、なじみのあるブランド名を冠したエナジードリンクを30~40代の男性に提供することで、伸びゆくエナジードリンク市場を活性化し、さらなる市場の拡大に貢献していきます。
サントリープレスリリース:「リゲイン エナジードリンク」新発売

同じくエナジードリンクという市場には、レッドブル、モンスターエナジーなど外資系企業の参入が相次ぎ、市民権を得ているように思います。2009年から10倍に成長というのはすごいですね。

そして今回、「リゲイン エナジードリンク」派生商品として『集中リゲイン』が「頭脳派の人のためのエナジードリンク」として発売されました。

マーケティング戦略分析手順

まず、企業の戦略が見やすいPromotion戦略について考え、その次に4Pの各要素、最後に市場機会・ターゲット・ポジショニングについて考えていきます。

身の回りのマーケティング戦略の分析手順

1. Promotion戦略

「メカニズムはもう、わかっている。」「集中なんて、つくれる。」というキャッチコピーで広告を展開しています。私はテレビを見ないのでCMを展開しているかどうかはわかりませんが、地下鉄の交通広告には出稿しているようです。
画像が小さくてわかりにくいかもしれませんが、「集中して読め。」という問いを出し、集中リゲインの商品広告文を読ませる仕組みにしています。

DSC_0037

2. 4Pの要素を考える

2-1 Product

商品は2種類あり、「集中リゲイン」とさらに成分を高めた「スーパー集中リゲイン 200」があります。

コア

サントリーのプレスリリースにてそれぞれの製品について次のように説明されています。

「集中リゲイン」
炭酸の刺激や香りで、力みを抑えて集中※2力を高めてくれるような味わいに仕上げました。テアニン100mgに加え、カフェイン80mg、アルギニン1,000mgも配合した“頭脳派エナジードリンク”です。
※2 集中している状態とは、過度な緊張や力みがなくリラックスし、十分なやる気をもっている状態を想定しています。

「スーパー集中リゲイン 200」
今回のキーとなる成分であるテアニンを「集中リゲイン」の2倍の200mg配合しました。さらに、小容量の100mlボトル缶に成分を凝縮し、炭酸を強めることで、ギュッと濃く、より効き目を感じられるような中味に仕上げました。
サントリープレスリリース:「集中リゲイン」新発売

ネーミング

読んでそのまま「集中」したい時の飲み物であることがすぐ分かります。かなり直球なネーミングですね。

パッケージ

白地に青文字のパッケージとなっています。昨年発売された旧パッケージデザイン(黄色地に黒文字+アクセントで赤文字)とは大きく変わっていますね。

regain-package

パッケージの色も重要で、それぞれの色は固有のイメージを持っています。
例えば黄色は「自由さ、明るさ、元気、幸福」、赤色は「勇気、積極的、情熱」など。旧デザインは元気さや情熱を全面に押し出したパッケージとなっています。実際のプレスリリースにも次のように記述されています。

黄色と黒のブランドカラーを基調とし、炭酸の刺激をシルバーで表現することで、存在感のあるパッケージデザインに仕上げました。また、「無敵の起動力」の文字や“翼の生えた虎※2”のイラストで、新しいエナジードリンクの力強さを表現しました。

一方、新発売の集中リゲインは青をメインとしたパッケージとなっています。青色には「知的、信頼、開放感、上品さ」などのイメージがあり、旧パッケージに比べて知的な印象を与えます

2-2 Price

「集中リゲイン」が希望小売価格185円、「スーパー集中リゲイン 200」が270円と、一般的な清涼飲料水と比べると高めの値段設定をしています。

「集中リゲイン」は価格のベンチマークにレッドブルを置いていそうですね。
コンビニでは「集中リゲイン」が200円で販売されていました。

2-3 Place

「集中リゲイン」、「スーパー集中リゲイン 200」ともに全国で販売されていますが、「スーパー集中リゲイン 200」はコンビニ・交通売店(キヨスクなど)限定での販売となっています。

下の写真は新宿のコンビニでの陳列状況です。引きの写真が撮れなかったので、少しわかりにくいのですが、レジ前の行列ができる位置の棚の胸の高さくらいの位置(一番目につきやすい位置)に陳列されています。

DSC_0039

2-4 Promotion

(先ほどの交通広告にプラスしての要素になりますが)、商品本体の上部にPOPをつけ新商品であることをアピールしています。また「〇〇に集中!」「〇〇さん集中!」というPOPで、自分が集中力を高めたいときだけでなく、頑張っているひとの差し入れとして購入させることも狙っているようです

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3. 市場機会、ターゲット、ポジショニングについて考える

3-1 市場機会

旧エナジードリンクのプレスリリースにも書かれているように、2014年のエナジードリンクの市場規模は2009年と比較すると約10倍になっており、急成長しているといえます。それぞれのシェアは不明ですが、レッドブルの2014年度の日本の売上は11%増とのこと(会社概要より)。これまで栄養ドリンク系は「デカビタC」しか展開していなかったサントリーが、第一三共にライセンス料を払ってでも「リゲイン」ブランドを使いたかった背景が読み取れます

3-2 ターゲット

集中リゲインではターゲットは明示されていませんが、旧エナジードリンクから引き続き「30~40代の男性」を狙っていそうです。

3-3 ポジショニング

リゲインの競合となる「レッドブル」「リゲイン」の両者のポジショニングについて見て行きましょう。

レッドブル

レッドブルは公式HPにて、「ドライブ」「授業中や自主勉強」「仕事」「スポーツ」「ゲーム」「遊び」にレッドブルを飲むことを進めています。クラブでも「レッドブルウォッカ」のPOPを積極的に掲示していたりしますね。

モンスターエナジー

モンスターエナジーは、「モンスター」を次のように定義しています。

モンスターとは、アクションスポーツ、パンクロック、パーティー、女のコと遊んでハメを外したりするライフスタイルを追求する人達自身のことです。

これら2社と比較するとリゲインは若干年齢層が高めで、「遊び」というより「仕事」のための購入を意図しているようです。

マーケティング戦略のまとめ

これまでの内容をまとめると以下のようになります。(図中の①、②、はそれぞれの要素の関連性を示しています。詳細は下表の該当番号を参照)

「集中リゲイン」のターゲットと4P・コミュニケーション戦略の整合性

要素 整合性
ターゲット 20~30代男性ビジネスマンを想定
スポーツやゲームといった「遊び」のためではなく、「仕事」のための活力がほしい人
Product テアニン100mg配合した “頭脳派エナジードリンク”
Price 185円 or 270円
清涼飲料水と比較すると 高めの値段設定
Place 全国展開
高価格版の商品は コンビニ、キヨスクでの販売
Promotion ・交通広告
・店舗の目立つ場所への陳列
・自分が飲むだけでなく、 差し入れとしての購入を誘う POP
1 社会人が出社時に立ち寄るコンビニへの展開
2 集中力を必要とするビジネスマンを対象に「集中力」を高めるプロダクト
3 比較的お金に余裕のある社会人を対象に高価格の飲料を展開
4 ビジネスマンが使う地下鉄への広告掲載
5 値段が高いと効果がありそう
6 「朝、集中力を高めるために飲むこと」を想定して、朝の買い物をするコンビニ・キヨスクでの販売
7 「メカニズムはもう、わかっている。」「集中なんて、つくれる。」という効果がありそうなコピー
8 値段が高くても買う人のいるコンビニでの展開。
9 効果があるなら高くても買いたい
10 広告を見た後、コンビニ・キヨスクですぐ買えるよう、広告(交通広告)を展開。

いかがでしょうか。マーケティングのそれぞれの要素も深く考えこまれていますし、それぞれの要素の関連性も整合性がとれていることがわかります

さいごに

(再度になりますが、)私はサントリーの社員ではないので、これらの戦略が合っているかどうかはわかりません。ただ、このように皆さんが目にする広告から企業のマーケティング戦略について推測することができます。(今回考えた戦略もおそらく大ハズレはしていないと思います。)

みなさんも、テレビCMや交通広告、店舗でのPOPなどで、企業のマーケティングに触れる機会が多くありますので、是非実践してみてください。
今回の記事は、たまたま電車の中で気になる広告があって、たまたまコンビニに行ったら商品が展開されていたので記事にしてみました。特別な内部資料なども無く、スマホでささっと検索してみただけでもおおよそ推測することができます。マーケティング戦略について何度も繰り返し考えることで、マーケティングの感覚は高まっていきます。

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