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入社の意思決定と内定辞退の5ステップ~複数内定獲得の際の対処法

ある企業から内定をもらい入社の意思決定をしたが、その後他の企業からも内定をもらい、どちらの企業に入社すべきか悩んでしまう…嬉しい悲鳴ではありますが、このような状況に置かれる就活生は少なくありません。

ではどのようにすれば自身のキャリアの意思決定ができ、(内定を辞退することになった場合)うまく内定辞退をする方法を考えてみましょう。

今回のポイントは、
(キャリアを歩む上で)上手くいかなかったとしても、他人の責任にせず、”自分が決めたことだから”と納得しやり通すことができる」と思える会社を選び覚悟を決めること
・会社対して誠実に行動すること(なるべく早く伝える、嘘をつかない、キチンと謝罪する

 

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入社のための意思決定と内定辞退の方法

1. 自身の志向を客観的に分析する

まず自身が何に心を動かされているのか客観的に冷静に分析してみましょう。

既に内定をもらっている会社と新しく内定をもらった会社のそれぞれ何処に惹かれ、何ををデメリットと感じているのか整理してみましょう。手順としては以下のように進めるとよいでしょう。

1. それぞれの企業に対するするポジティブ・ネガティブ要素をリスト化する(両社についてポジティブ、ネガティブそれぞれ10個洗い出す)
2.書きだした要素の中から重要だと考えるものを両者ともポジティブ・ネガティブ3つずつを選ぶ
3. 抽出した要素について3回の「なぜそう思うのか?」を繰り返し、真因を掴む

詳しい方法は失敗しない就活ノートの作り方【自己分析編】を御覧ください。

自分と向き合う際には外見や見栄を捨てて、本音でどう思うのかを考えましょう。「A社の方が自己成長できるから」といった見せかけの自分ではなく、自分の本心と向い合ってみましょう(もしかして「お給料が高そう」とか「女の子にモテそう」とかそういった要素が自身の意思決定に影響を与えている可能性があります。)
変に意識高くなる必要はありません。

これのステップを経ることで、自身が何に悩んでいるのかが明確化することができます。

2. 何があれば意思決定できるかを考える

次に、自身が入社する会社を決めるために、どんな情報があれば意思決定できるかを整理しましょう。

というのも、入社の意思決定を阻害する要因としては1. で挙げたネガティブ要素が影響しています。
したがって、A社 B社それぞれのネガティブ要素(「入社後クビになるかもしれない」「自分がその会社で通用するのかわからない」「他の社員さんと雰囲気が合わない気がする」など)について、何があれば入社の意思決定ができるかを考えましょう。

ポイントは「入社の際に重視する要素の優先度をつけること」と、「リスクを見極めること」にあります。

入社の際に重視する要素の優先度をつけること

みなさんそれぞれに思い描く理想の会社があるかと思いますが、100点満点の会社は存在しません。なにかしらメリット・デメリットがあるのです。したがって、あなたが入社の際に重視する要素について優先度をつけましょう

「自己成長」が第一優先順位なのであれば、「入社後の社会的ステータスや女の子にモテるか」は諦めることも必要ですし、「長く安定して働けること」が第一優先順位なのであれば、「”やりがい”や”ワクワクさ”」はどこかで捨てなければならない要素になるかもしれません。

もしどうしても一方の要素が捨て切ればいのであれば、それは優先度の付け方が間違っているということですので、再度何を大切にしたいのかを考えましょう。

自身の意思決定の優先順位が立てられたら、あとは自身の仮説(「この会社なら成長できそう」など)が本当であるかを確かめる事実を集めていけばよいのです。

リスクを見極めること

そもそも、リスクとは「ある行動を取った際に発生する損害」のように捉えているかもしれませんが、正確には「プラスにもマイナスにも働きうる不確定要素」の意味であります。

「優先度はついたけれどなんとなく心配…」といった場合、デメリットに感じる要素は完全に排除することはできないので、そのリスクを取ってでも入社すべきかどうかを判断することが求められ、まずそのリスク(不確定要素)を見極める必要があります。
例えば、それぞれの会社での「(キャリアの)平均的事例」「成功事例」「失敗事例」を知り、どの様な確率で発生するのか予め把握しておくことなどが挙げられます。

3. 意思決定に必要な情報を集める

2.に於いてどんな情報を集めるべきかが明確になったかと思いますので、実際にその情報を集めてみましょう。
その際、ネットの書き込みなどの情報だけでは足りないことが想定されるので、実際に内定をもらった2社に再度ヒアリングさせてもらうなど、実際にあなたの手足を使って情報を集めましょう。

既に内定をもらった会社に他社と迷っていることや再度ヒアリングさせて欲しいことを伝えるのは少々プレッシャーのかかることではありますが、誠実に対応すればマイナスの影響は小さく、概ね受け入れてもらえるでしょう。

下記の内容のメールを採用担当の方に送り、事実を確かめに行きましょう。

・内定をもらった後、以前に受けていた会社からの内定をもらい、悩んでいること。
・自身を振り返って、〇〇がネックだと捉えていて、△△についてヒアリングさせて欲しい
・以前入社の意思決定をしたにも関わらず、悩んでいることへの謝罪と機会をいただくことのお願い

採用担当としては、一度した約束を反古にするもので、あまり気分の良いことではありませんが、いきなり内定辞退をされるよりは幾分マシに捉えられます。

もし内定辞退することが自身の中でほとんど決まっていたとしても、前もってジャブを打っておくほうが後々人事とのやりとりが軽減されます

情報の集め方は
・実際に何人かの社員にヒアリングする(OB訪問をセッティングしてもらう)
・人事に会社の人材育成方針についてヒアリングする
・1日オフィス見学をさせてもらう
・数日間インターンをさせてもらう
などが挙げら、皆さんの仮説を検証するためにどの手段が最適化も併せて考え、人事に提案しましょう。
ポジションや年次が上の人ほど企業な話を聞くことができますが、最終面接などでお会いした役員クラスの方に再度会わせてもらうのは難しいでしょう。
1日オフィスを見学させてもらうのは、あまり人事の手間にもなりませんし、会社の雰囲気を知る良い機会になるかと思います。

また他にも、他社のビジネスマンや両親、先輩などの意見を聞いてみるというのも良いでしょう
一つの情報源にこだわらず、幅広く意見を集めてみましょう。
その際、いろんな立場から様々な意見を耳にするかと思いますが、印象に流される事実を受け止めるようにしましょう。

4. 意思決定する

ここまでで、自身の意思決定の優先度とそれに関する情報を集めることができたので、後は自身で意思決定するフェーズとなります。
自身の判断基準の優先順位とリスクの見極めを行い、どちらの会社に入社すべきかを考えましょう。
3. で様々な立場の話を聞いたかと思いますが、特定の意見に影響されすぎず、あくまでも客観的に考えて結論を出せるとよいでしょう。

例1:(自己成長できそうだけど)激務でやっていけるか心配

「激務」という言葉だけに踊らされるのではなく、一日何時間働くのか、実際に激務が原因でやめた人はどれくらいいるのか、の情報を得て、試しに一日〇〇時間作業をすることを数週間やってみるなどしてみる。
その結果、(激務といわれるけれど)やっていけそうであればそのデメリットは「許容範囲内」と捉えることができますし、もしこの生活は無理と感じたら身体を壊す前に諦めるのも一つです。

例2:(やりがいはあるけれど)そのお給料でやっていけるか心配

漠然とした「薄給」というイメージではなく、自身が〇〇歳にいくらの年収があればよいのかを具体的にしてみましょう。

自分がどれくらいの生活をしたいのかは自身の両親の年収をヒアリングすれば一定のイメージが付きますし、また、会社の平均年収を知りたければ有価証券報告書などに記載されています。
もし、その会社の平均年収が自分の理想を下回っていた場合、どうすればその平均を上回ることができるのか(平均年収はあくまでも”平均”であるため、平均年収が低い会社でもポジションが上がれば高収入を得ることも可能です。)、を明確にしてみましょう。

例えば自身の満足行く年収を得るには「〇〇歳で部長のポジションに就く必要がある」ということがわかったとき、その激しい出世競争を勝ち抜く自身や能力があるか、(やりがいはあるけれど)うまく出世できなかった時の年収を受け入れることができるのか、など考えてみましょう。

つまり、その会社の「(キャリアの)平均的事例」「成功事例」「失敗事例」について知り、それぞれの見込み確率を考え、その上で条件を飲めるのか判断しましょう。

なぜキャリアの選択で迷うのか

今までの試験や入試では偏差値といった絶対的な基準がありましたが、会社選びでは人それぞれが自身の基準を作りそれに基いて良し悪しを判断する必要があります(キャリアに絶対的な正解はありません)。

このキャリアの迷いは、高学歴の学生で、特に今まで「一番偏差値が高かったから」という理由で進路を選んできた学生によく発生します。(さらに言えば「大学に入ってから進路が選べるから、1番だから」という理由で入学を決めた東大生に多いですね…)
今まで人が羨むような良いコースを歩んできたかと思いますが、「就職活動」という局面では「良し悪し」の基準がいくつもあり、どれを選んでよいかわからなくなってしまうのですね。

あくまでも筆者の独断と偏見ですが、自身のやりたいことを踏まえて大学選びをした京大生はキャリアの迷いが少ないように思います。(ただし、京大生の中にも関西で一番だったから、親に勧められたからという理由で大学選びをした人は、やはり入社の意思決定に迷いが生じることが多いように感じます。)

また、どの選択肢が正しかったかは数十年後に振り返ってみないとわかりません。
みなさんはもう成人して大人ですので、自分の意思決定に責任を持つ必要があります。

後悔しないためのキャリアの考え方

人は弱い生き物なので、上手くいかなかった時に人の責任にしてしまいがちです。
キャリアの選択には絶対的な正解はないので、「上手くいかなかった時に他人の責任にせず、”自分が決めたことだから”と納得しやり通すことができるか」を自分自身に問いかけてみましょう。

もちろん「就職偏差値が高かったから」とか「世間での評判が良いから」という理由で入社を決めるのも間違いではありません。

しかし、ビジネス人生を送る上で、数多くの超えなければならないハードルに直面します。
その困難に直面した時に、それを乗り越えられるかどうかは、自身の入社の意思決定の覚悟の大きさに左右される、と私は考えます。
どんなに難しい課題でも自身がこの会社でやり切るという覚悟が大きければ乗り越えることができますし、逆にそれが小さければ誰かの責任にしてその困難から逃げてしまいます。

入社する会社を選ぶ際に一番重要なのは、その覚悟なのです。(覚悟が決まるのであればサイコロを振って決めても良いと思います。)

 

5. 内定の辞退を伝える

自身の意思が決まったら内定を辞退する旨、人事に伝えましょう。
伝え方としては、電話またはメールにて内定を辞退したい旨伝えましょう。

みなさんにとっては非常に心苦しいことかと思いますが、一度「入社します」と約束したことを反故にすることですので、誠実に対応しましょう。

内定辞退の連絡の方法

電話でもメールでも構いませんので、新卒採用担当宛に連絡をしましょう
伝える内容としては、下記の事項を伝えると良いでしょう。

・以前から相談していた別の会社とどちらに入社すべきか悩んだが、別の会社に入社することを意思決定した。
・一度入社の約束をしたが反故にしてしまうことになり、申し訳ないという謝罪。
・今まで、セミナーやインターン、面接、OB訪問などでお世話になったことへの御礼。

いきなり、内定辞退のメールを送ると印象が極端に悪くなりますが、予め悩んでいることを伝えていれば、このやりとりがスムーズに行えます

一度入社すると答えている場合がほとんどでのすで、誠心誠意謝罪しましょう。

あなたの内定辞退の代償として、他に内定を貰えるはずだった人がもらえなくなり、会社は企業成長にむけて必要な人員が1人欠けることになり、人事としても内定辞退が発生するということは採用担当者としての評価がさがることでもあります。

よく、内定辞退の際にカレーをかけられるとかコーヒーをかけられるといった話がありますが(現在ではほぼ都市伝説となっていますが…)、企業側からするとそれくらいダメージの大きなことです。

辞退理由の確認

内定辞退の連絡をすると、大抵辞退理由を聞かれます。自身の考えを(相手への失礼のない範囲で)伝えましょう。
その際、嘘のつくことの無いよう正直に伝えましょう。

「大学院に進学する」「親が倒れたため実家で就職する」など嘘の理由で内定を辞退する人もいますが、大抵その嘘はバレてしまします。そして、嘘がバレた時に今までの信頼関係が崩壊していまします。
ビジネスの世界は意外と狭く、他業種に入社することになってもどこかで繋がっているので、誠実に対応しましょう。

内定辞退の慰留

企業によっては考え直すよう慰留されることもあります。(場合によってはあなたの伝えた辞退理由について反論されることもあるかと思います)

その際は、ひと通り人事側の意見を聞いた後、「間違った決断かもしれませんが、私なりに決意を決めた」旨を伝えると良いでしょう。
間違っても、慰留するための会社側の反論に対抗しないようにしましょう。人事側は辞退の慰留をする交渉になれているので、あなたがどんなに反論(嘘も含む)したとしても論破されてしまうことがほとんどでしょう。

ポイントは、会社側の意見をキチンと受け止め、その上で自身が意思決定したことを伝えることです。

連絡後の対応:

メール・電話で辞退OKのところもあれば、一度会社に来るように言われる場合もあります。
会社に来るように伝えられた場合、その旨了承し、謝罪に行くようにしましょう。

再度、慰留されることもありますが、よっぽどのことがない限り、自身が別の会社に意思決定したことを伝えれば相手も納得してくれるでしょう。

Appendix_内定に法的拘束力はあるのか

学生が企業からもらった内定を辞退することには、法的拘束力はありません。
内定誓約書などを書いていても基本的に辞退することに問題はありませんので、フラットに自身のキャリアについて考えてください。

ただし、先述のとおり企業側は一旦出した内定取り消すことはできないため、あなたが内定を辞退するということは、誰かが貰うはずだった内定が無くなるということになります。そして、企業側は成長に向けて採用した人員が1人欠けることになるのです。
中には内定をたくさん貰うことを就活のゴールとしている方もいらっしゃるかもしれませんが、興味半分で内定承諾するのは辞めましょう。

内定辞退に罰則があるわけではありませんが、ビジネスの世界は意外と狭く、社会人になってから辞退した会社とお付き合いする可能性は大いにありえますので、誠実に対応しましょう。

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