現役人事が語る ~採用・面接の位置づけとは~
就職活動において避けて通れないのが面接。
「自己PRをきっちりと重ねてきたのに、いつも面接で落ちてしまう。」そんな経験はありませんか?
現役の人事として面接を重ねていて、感じることは、「学生側が採用活動における面接の位置づけ」についてしっかりと理解ができていないことです。つい、自分を売り込むことばかりを考えてしまい、人事が何を見ようとしているのかまで考えが及んでいないことが多々あります。
今回のはそんなみなさんのために、人事が面接において何を考えているのかをお伝えします。
1.企業から見た採用の位置づけとは
そもそも企業からみて採用活動とはどのような位置づけなのでしょうか?
労働力を得るという観点から見れば下記のような施策があります
■無期雇用
・新卒採用
・中途採用
■有期雇用
・契約社員
・アルバイト
・長期インターン
■その他
・派遣社員(上記とは異なり間接雇用となる)
・外注(コールセンターなど外注化)
・M&Aによる拡大
このような人事施策のバリエーションがあるなかで、何故新卒採用を行うのかを考えてほしい。一般的に新卒社員にはその会社の文化やDNAを作っていってほしいという話が聞かれるが、そのとき時の企業の経営課題によって異なる
(e.g. 06~08年のメガバンクの大量採用など)。
今、志望している企業が何を考えて採用を行っているのかは推測できるようになろう。
2.人材戦略がどのように決まるか
ではどのように企業の採用の方針について推測すればよいのか。
まずは企業の人材戦略の考え方から知っておくと良いでしょう。
人材マネジメント戦略の大元には「経営理念やミッション」があり、そこから「現在展開しているビジネスモデル、経営戦略」が生まれます。
そしてそれを達成するために今後必要な組織と人材が決定し、それを実現するための人材マネジメント戦略を考えていきます。
したがって、現在どのようなビジネスをしていて、職務の遂行にどのような力が求められているか、もしくは今後どのようなビジネスを展開したくて、その際にどの様な能力が求められるのかを考えることで、求める人物像を推測することができます。
もちろん皆さんは会社を引っ張っていく人材として採用されますが、まずはビジネスマンとして一人前になる必要があります。
よって「これからのビジネスで必要となる力」よりも「今の既存のビジネスで求められている力」の方がウエイトは大きくなります。
上記のような人事・採用戦略を頭に描きながら、その企業がどの様な人材を欲しているかを考えながらES,面接などを受けるとよいでしょう。
3.企業の選考手段
企業それぞれにおいて「優秀な人」の定義はことなるが、どの会社も入社後社内で活躍し、結果を出してくれる人材を求めている。そのための選考手段としては下記のようなものがある
- 面接
最もオーソドックスな選考。グループ面接から1対1の役員面接、面接官の質問に答える形式からワークを行うケース面接までさまざまなものがある。面接官の工数(投入時間)はかかるものの、手軽であるため多用されやすい。
- グループディスカッション
抽象度の高い議題からデータを元に読み解くものまで様々存在する。(詳しくは GDで注意すべき5つのこと~グループディスカッション対策~ 参照)テーマを用意し、選考基準を作るのは手間がかかるが、一度に6人程度の学生を短時間で見ることができるため、採用の効率は良い。グループディスカッションの位置づけは2種類ある
【1】足切りのためのGD
選考の初期段階で使われる選考。先述の通り面接では時間あたりの効率が悪いため、面接の前段階の選考として使われる。主に仕事を進める上での最低限のコミュニケーション力、ディスカッション能力を有しているかなどが見られ、思考の深さは選考基準に入っていないことが多い(人数が多いため、そこまで見極められない)
【2】思考力・地頭を見極めるためのGD
数回面接をした上でディスカッションが課される場合はこちらの場合になる。学生同士で議論をし、思考を深めていく。どこまで学生が考えられるかはその場にいる学生の質によって左右されるため、実施までに幾つか選考を実施し、ある程度選ばれた人材でディスカッションが行われる。
ただし、学生の思考の深さにも限界があるため、より地頭をジャッジしようと考える場合は後述のケース面接や社員とのディスカッションが必要となる。
- ケース面接、社員とのディスカッション
その人の深い思考力、物おじしないかどうかを見極める。コミュニケーション能力、表層的な思考力はグループディスカッションにて把握することができるが、深い思考力はわからない。学生よりも深い思考のできる社員が学生より一枚上手の質問を投げかけることによりどの程度思考が深まっていくかを見極めている。
- インターン
業務体験型から事業開発系までこちらも様々な形式が存在。インターンの企画の設計には大きな労力が必要とされ、戦略においても運営においてもノウハウがもとめられる。一方、長期間に渡り、学生と関わることができるため、面接やグループディスカッションでは見極められなかった学生の一面を見ることができる。
企業はこのような選考レパートリーの中から「求める人物像」に合致する学生を探しだす。
4.企業がなぜ面接を実施するか
企業が何故面接を実施するのか。
- 学生と直接話をし、会社にふさわしいかをジャッジする
面接の第一目的は自社で活躍してくれる人物かを判断することです。
その上で直接話しを聞き、学生をより知っていくことは欠かせません。 - 会社の魅力を伝える
意外にも思われるかもしれませんが、面接の第二目的は自社の魅力づけです。
もちろん会社説明会などで自社の紹介をしますが、数十人~数百人単位になってしまいます。
一方面接はグループ面接であったとしても数人程度。
会社説明会で話しきれなかった会社の魅力を伝えたり、面接そのもの(ロジカルに会話を進める)で社員の優秀さを伝えたりします。
5.面接において何をみられているか
ここからが本題の面接について。面接において聞かれること、面接スタイルによって何を見ているかが異なる。
- 学生時代にがんばったこと
その人の能力、人柄を知るにはその人が語る言葉ではなく、具体的にどのような行動を起こしたのかを見ることが最適である。(詳細は『コンピテンシー面接マニュアル』参照)。
過去どのような環境でどのような行動を起こしてきたのかを知ることで、その人が今後入社した後にどのような行動を起こすのかを見極める。(詳しくは「何故学生時代にがんばったことを質問するのか」参照) - 将来の夢
企業の採用のゴールは「内定を出して入社してもらうこと」ではなく、「数年後企業内で活躍してくれること」です。そのため、その人が将来叶えたいことが仕事の中で実現されることが望ましいと考えています。 - 志望理由
その人がどの程度自社に入社したいのかから熱意、辞退リスクを把握する。企業にとって誰かに内定を出すということは、誰かに「お祈りメール」を送ることと同義である。故に企業は内定辞退を嫌う。また人事の評価にもつながるので辞退リスクは下げようとする(詳細は「Appendix-企業の人事は何によって評価されるか」を参照)
6.何故学生時代にがんばったことを質問するのか
企業がどのような人材を求めているかは「2.人材戦略がどのように決まるか」において伝えたとおりである。
学生時代に頑張ったことの話から企業が確認したいのは、入社後の活躍の再現性と反復性です。
学生の場合、ほとんどの人がビジネスの経験が無いため、会社で活躍するかどうかのスキルや経験を直接的に見極めることはできません。そこで企業は「学生の過去の経験」を聞くことでまだ経験したことのないビジネスの世界で活躍するかどうかを見極めています。
例えると、テニスの未経験者であっても過去にサッカーで全国大会に出場していたら、テニスの大会でも活躍してくれそうなことが想像できますね。それはテニスのテクニックは皆無だけれども、基礎体力や相手との駆け引き、目標に向かって努力していくことの大切さなどを体得しているからでしょう。
同じように採用においても、ビジネスのスキルはまだ足りていないが、これまでの思考・行動特性からその人が入社後に活躍してくれる人なのか(再現性)、それが長期間に渡り継続されるものなのか(反復性)を見極めていきます。
7.さいごに
就活での面接は企業が何を考えているかわからず不安に思うこともあるかもしれません。「○○の質問をされた時はどう答えたらいいの?」「△△って答えていいの?」など面接での疑問を挙げればきりがありません。そしてそれらについての明確な答えはありません。
確からしい答えを得る方法は皆さんが企業の「面接官」「採用責任者」「経営者」の視点で推測してみることです。自分がその企業の経営者であればどんな人が必要で、採用責任者であればそれぞれの選考フローで何をジャッジするか、面接官であれば決められた採用基準を満たしているかを見極めるためにどんな質問で何を聞こうとしているのか、推測することができます。
面接の数をこなすことも重要ですが、一度その企業の採用側の視点に立って考えてみると、何故自分が面接結果がでなかったのかが理解できるかと思います。
就活は長期戦ですので、期間中にPDCAのサイクルをまわして改善していきましょう!
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