志望動機を考えるの2つの要素~失敗しない志望理由の書き方
ESや面接において聞かれるのが、会社への志望動機です。
いきなり、夢ややりたいことを聞かれてもどう書けばよいかわからない、しっかりと書いているのに読み返してみるとなんだかテンプレートのような志望動機になってしまう。
そんなあなたのために今回は、何故企業は志望動機を聞くのかという企業側の背景から、志望動機の書き方までお伝えしたいと思います。
そもそも、企業はなぜ志望動機を聞くのか?
面接やESにおいて、何故企業は志望動機を聞くのでしょうか?
それは、企業のビジョンとあなたのビジョンの方向性が近いかどうかを探り、会社と社員が長く良好な関係を保つためです。
企業の採用のゴール
そもそも、企業側の採用のゴールは、「優秀な(もしくはポテンシャルのある)人を探し、入社してもらい、会社で活躍し、業績・企業価値を上げることに貢献してもらうこと」です。
しかし、新卒で入社するみなさんはまだビジネスの経験が乏しく、一人前のビジネスマンになるためには少なくとも3年ほどの期間が必要です。その間、みなさんのお給料と育成コスト(研修のようなものだけでなく、日々の業務の中で、先輩社員があなた達を育成する工数も含む)が必要なのです。初任給が月20万程度の社員でも、社会保険料や福利厚生もろもろの費用を含めると会社側は月50万~100万ほどのコストがかかってしまいます(月50万でも3年間で1,800万円の投資になる訳です)。
そのため、入社して3年程度で退職されてしまうと、企業としては一番損をしてしまうのです(せっかく投資・育成して、これから活躍という時期に会社を去ってしまうことになる)。
したがって新卒採用においては、優秀な人というだけでなく、長く一緒に働いてくれる人を欲しているのです。(あくまでも一般論で外資系企業のように「Up or Out」の企業もありますが、例外ですので、今回は一般論についてご説明します。)
長く一緒に働いてもらうために必要なこと
では、どうすれば長く働いてくれるのでしょうか。
そのための手段としては、高い報酬、充実した福利厚生や研修制度などによりモチベートする方法ももちろんありますが、これらは費用がかかりますし、なにより「エサで社員を釣る」ようなマネジメントは健全ではありません。
もっともコストがかからず健全なマネジメントの方法は、「社員が働き会社に貢献することを通して、その人自身の夢やビジョンが達成される」ようにすることです。
つまり、企業のビジョンとあなたのビジョンが合致することです。企業もあなたが働いてくれることで会社を大きくすることに貢献してもらい、あなたも会社が大きくなることで自身の夢に進んでいく、そのような状態であれば、多少仕事が大変だろうが、お給料に満足いかなくてもその人自身が会社で働く意義を見いだせるのです。
企業のビジョンとあなたのビジョンが合致させるためには?
では、企業のビジョンと社員のビジョンを合致させるためにはどうしたら良いのでしょうか?
残念ながら、その人自身のビジョンを変化させるのには多くの手間がかかりますし、どんなに頑張っても変わらない可能性が高いのです。
したがって、企業は採用の段階から「ビジョンの合致する人材」を採用するのです。
企業が志望動機を聞くのは、会社に合うかどうかどうかを見極める手段なのです。
志望動機を書く上で必要な2つの要素
先述の通り、その会社への志望動機には自身のビジョンと会社のビジョンが合致していることを示す必要があります。
しかし、あなた自身のビジョンが明確で無いことや、会社のビジョンを間違って認識していることが多々起こります。
自身のビジョンが明確で無いと、会社側からすると何をしたい人なのかがわからず長く一緒に働いてくれる人なのかがわかりません。
会社のビジョンを間違って認識していると、どんなに素晴らしい夢を語っていてもその会社で実現できる可能性が低く、最終的に離職につながってしまいます。
そのため、志望動機を書くためには「あなた自身のビジョンが明確であること」と「会社のビジョンを理解していること」を伝える必要があります。
1. あなたのビジョンを明確にすること
まずは、あなたのビジョンを明確にすることが必要です。
そのためには、あなたの価値観や人生観、理念の根本を理解し、相手に語れる状態にしておくことです。
明確な夢があればそれを伝えれば良いでしょうし、それがなければあなたが何を大切にしたいのか、どんなキャリアを歩みたいかを明確にしておくことが必要です。
就活を進める上で、必ず「明確な夢・成し遂げたいこと」が必要なわけではありません。仕事に関わることで、社会への問題意識や課題感が醸成され、あなたが本当にやりたいことが見つかるはずです。ただし、「何を大切にしたいのか、どんなキャリアを歩みたいか」まで不明確なままでは、企業はあなたを採用することはできません。
あなたのビジョンを理解するためには「あなたが将来どのようなキャリアをあゆみたいのか」「自身の特性」を考えるとよいでしょう。こちらは両方の要素について考えてもよいですし、片方だけであなたのビジョンが明確になるのであれば片方でも問題無いと思います。
1-1 自分がどんなキャリアを歩みたいか
1-2 自身の特性を知る
2. 会社のビジョンを理解すること
会社のビジョンを理解するためには「企業理念」「ビジネスモデル」「事業戦略」「実務」を知る必要があります。これらは下図のようにピラミッドのような構造になっています。
より上層になるほどあなたへの影響度は大きくなりますが、時間の経過や状況に応じて変化する要素にもなります。(どんな仕事をするかは部署異動などで容易に変化しますし、市場環境の変化により事業戦略が変更になることもあります。)
逆に、より下層になるほど変化しにくい(企業理念やそもそものビジネスモデルは数年では変化しない)ものになり、企業の本質に近づきます。
2-1 会社の理念を理解する
企業の根幹をなしているのはミッションやビジョンといった企業理念です。これらは会社のHPに記載されていたり、採用の場面でも語られる事が多いのでチェックしておきましょう。
ただし、大体の企業理念は抽象的なものが多く、読んだところで本質を理解するのは難しい可能性があります。そのような場合は、OB訪問や説明会で個別に社員の方に質問してみるとよいでしょう。
質問例:
・〇〇さんのこれまでの経験で、△△という企業理念を体現しているようなエピソードがあれば教えてください。
2-2 ビジネスモデルを理解する
企業は企業理念を元に顧客への価値提供を行い、ビジネスを進めています。誰にどんな価値をどうやって提供しているかを知ることで、その先の事業戦略や実務(どんな仕事をさせてもらえるのか)を理解する手助けになります。
2-3 事業戦略を知る
その企業が今後どのような方向に舵取りをするのかを理解し、あなたのビジョンと合致しているのかを確かめる必要があります。ただし、会社の戦略は環境の変化で変わっていくものですので、現在会社が打ち出している戦略が、今後も継続されるとは限りません。
例えば、5年ほど前に話題になったシェールガス。総合商社各社はこぞって事業紹介にシェールガスの話題を取り入れていましたが、住友商事などの投資の失敗による巨額損失などを計上することとなり、いまはどの会社も積極的にアピールしていません。
2-4 実務を知る
あなたがその会社でどのような仕事を任せられるのかを理解する必要があります。これを欠いては「こんなはずじゃなかった」と後悔することになります。その会社のビジネスモデルを知り、どんな仕事をさせてもらえるのかを把握しましょう。
企業のビジョンを理解する上での注意点
ここで1つ注意しなければならないことがあり、採用の場面で語っている会社の方向性と実際の会社の方向性にズレがある可能性があるのです。もちろん、なるべく実際の会社の方向性と齟齬が無いよう、就活生の皆さんに会社の紹介をしていますが、採用の場面では現実ラインよりも若干「ワクワク気味」に伝えられることがあります。
そのため、採用の場面で語られる「面白そうな仕事」について面接で伝えても、実際のビジネスと乖離していることがあります。(これは企業人事が大いに反省しなければならない部分であります)
したがって、みなさんもOB訪問などで、自分の興味のある仕事が本当にその会社でできるのかを確かめることが重要です。
志望動機を伝える3つのポイント
志望動機を書く上でのエッセンスは次の3つに集約されます。
1. 自身のビジョンを示す
2. 企業のビジョンを理解していることを示す
3. 1,2が合致していることを示す
それぞれの要素についてうまく伝えるためのテクニックをご紹介したいと思います。なお、志望動機に下記のすべてを盛り込む必要はありません。必要と思う要素をピックアップし、うまく組み合わせて志望動機を作っていくと良いでしょう。
1.自身のビジョンを示す
価値観を語る
あなたが何を大切にしたいか価値観など伝えると会社側もあなたを理解する手がかりとなります。その際はあなたの過去の経験も合わせて語ると説得力が増します。
長期的にどんな仕事をしたいか
将来の夢に近い要素です。企業があなたと長期的に良好な関係を保てるかを知るポイントにもなります。
短期的にどんな仕事に取り組みたいか
長期的な夢も必要ですが、直近でどのような仕事をしたいかも重要です。入社後の業務を理解し、その業務で経験を積むことをイメージできていることを伝えられるとよいでしょう。
2.会社のビジョンを理解していることを示す
理念に共感したポイント
企業理念に共感したこと伝えるのも1つの方法です。ただし「御社の〇〇の理念に共感しました!」だけでは薄っぺらく説得力がありません。理念のどのような点に共感したのか、何故共感したのかについて語れることが必要です。過去の自身の体験などを踏まえて共感するポイントを伝えるとより説得力が増します。
3. 1,2が合致していることを示す
会社選びの軸
どのような基準で入社したい会社を選んでいるのかを伝えることで、あなたが会社選びで何を重視しているかを伝えることができます。
同業他社との違い、何故その部署を選んだのか
志望企業にゾッコンなのは悪くありませんが、盲目的な愛は悲しい結果を生みます。同業他社を理解し、それらと比べて志望企業がベストな選択だということが語れると、入社後の迷いが少なくなり、会社としても安心して採用することができます。
志望動機のNG例とその理由
志望動機として下記の物はNGとされています。そもそも、会社が志望動機から何を見極めたいのかを理解すれば当然のことですね。
入社後の研修制度について語る
社員研修は将来への投資であり、それをありがたいと思うのはあたりまえなのです。
そのような研修制度に魅力を感じるのであれば、それを踏まえてあなたが会社にどう貢献したいのかを語る必要があります。そうでないと、会社にとっては投資だけでその回収(あなたが成果を出して貢献してくれること)が見込めなくなってしまいます。会社は学校ではないのです。
待遇、福利厚生について語る
もちろん充実した待遇や福利厚生魅力に感じますが、それらは社員に対する「アメ」な訳で、会社はアメに群がる人よりも、会社に貢献してくれる人を求めているのです。
CSRなど事業の本筋とは関連のないところに共感する
もちろん企業のCSR活動(社会貢献活動)は重要ですが、CSR活動をするために企業が存在しているわけではありません。企業のビジネスの本質に触れる部分に一致点を見出さないと意味を持ちません。
その企業の製品やサービスのファンであることを伝える
企業は自社の製品のファンを採用したい訳ではありません。自社の製品をより良くし業績に貢献してくれることを期待しています。
※もちろん会社によっては社員に「熱狂的な会社のファン」であることを求めるところもあります。そのような企業には「会社愛」を伝えることもアピールの手段になりえますが、社員にそこまで求めない会社には有効なアピールにはなりません。
Appendix_志望動機を考えるメリット
志望動機はなにも内定をもらうために行うものではありません。志望動機を考えるメリットは次の2つがあります。
1. 将来について考えるきっかけとなる
これまでの人生において、今後何十年も先の人生を考えたり、自分が社会にどう貢献するかを考える機会はあまり多くなかったのかと思います。就活の期間だからこそ、ゆっくりと本腰を入れて自身の将来について考えられるのではないでしょうか?
2. 入社後のモチベーションのセルフマネジメントに繋がる
ビジネスでは、これまで想像していなかったような高いハードルに直面します。ぶっちゃけ、できることなら逃げてしまいたくなります。でも逃げてばかりでは成長はできません。
困難に直面した際に、あなたの心の拠り所になるのは入社した時の志望動機だと思います。
「〇〇を志して入社したんだからもう少し頑張ってみよう」、「あれだけ就活の時に考えぬいて選んだ会社なんだからここで頑張ってみよう」など、自分のモチベーションをセルフマネジメントするための手段になりえます。
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2015/08/27
ES・面接テクニック ES対策, 志望動機, 面接対策
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