IR情報からみる三菱商事の企業分析

総合商社に売上首位のの三菱商事についてIR情報から企業分析をしていきましょう。

巷では、商社は配属リスクがある、入社したら一生安泰といったイメージがありますが、それらについてホントなのか検証してきましょう。

三井物産の企業分析はこちらから:

IR情報からみる三井物産の企業分析
財閥系総合商社の三井物産。仕事の魅力や待遇の良さから総合商社の人気が高まっていますが、周囲の評判だけでなく、IR情報から会社を知るようにしましょう。どの事業部が付加価値を出しているのか、入社した場合どの事業部に配属される可能性が高いのか見て

0. SUMMARY

配属の可能性が高いのは
生活産業>金属>機械=化学品>エネルギー事業>新産業金融>地球環境・インフラ事業
(ただしコーポレートスタッフ除く)

一人あたりの生み出す付加価値が高い事業部は
エネルギー事業>新産業金融>機械>地球環境・インフラ事業>金属>生活産業>化学品
(簡易的に売上総利益≒付加価値として算出)

事業投資による収益割合の高い部署は
地球環境・インフラ事業>>新産業金融>機械>エネルギー事業>化学品>生活産業>金属

・総合商社も業績が悪くなるとリストラを実施している
2000年→2004年の4年間で単体従業員が2,600人減少(リストラ)している
※2000年始めは商社冬の時代とも言われていた時期にあたります。

1. 三菱商事 全体の業績推移をみる

決算期 (売上)
[億円]
収益
[億円]
粗利
[億円]
営利
[億円]
当期純利益
[億円]
粗利率 営利率 当期
純利益率
2010年 170,987 45,408 10,166 1,823 2,758 22.4% 4.0% 6.1%
2011年 192,334 52,069 11,499 3,141 4,645 22.1% 6.0% 8.9%
2012年 201,263 55,658 11,279 2,711 4,523 20.3% 4.9% 8.1%
2013年 202,072 59,688 10,297 1,339 3,600 17.3% 2.2% 6.0%
2014年 75,893 11,601 4,448 15.3% 5.9%

※粗利率、営業利益率、当期純利益率は収益を元に算出

 

決算期 売上
成長率
粗利
成長率
営利
成長率
従業員数 平均
臨時雇用
単体
従業員数
単体平均
臨時雇用
一人当たり
付加価値
[万円/人]
営業CF
[億円]
投資CF
[億円]
財務CF
[億円]
2010 -24% -31% -69% 58,583 19,563 5,742 822 1,735 7,606 -1,412 -7,551
2011 12% 13% 72% 58,470 19,024 5,665 793 1,967 3,312 -2,626 767
2012 5% -2% -14% 63,058 19,734 5,796 763 1,789 5,507 -11,009 5,991
2013 0% -9% -51% 65,975 17,916 5,815 732 1,561 4,033 -7,525 4,017
2014 13% 68,383 17,807 5,651 688 1,697 2,581 -1,827 -1,221

※過去の業績比較のため米国会計基準の数値を用いた

三菱商事の業績推移_2014

商社はトレーディング(薄利多売)による収益が大きいため、売上(≒取扱高)ではなく収益(≒手数料収入)をベースにしている。
他の5大商社も同じく、売上ではなく収益として業績を公表している。
したがって、収益は一般的な企業でいう売上総利益(粗利)に近い値となり、それに伴い利益率も高い値を示している。

売上をベースとした各利益率は下記の通り。

決算期 粗利率 営利率 当期純利益率
2010年3月 5.9% 1.1% 1.6%
2011年3月 6.0% 1.6% 2.4%
2012年3月 5.6% 1.3% 2.2%
2013年3月 5.1% 0.7% 1.8%

※2014年3月期は売上を公表していないため不明

純利益率でいくとおおよそ2%なので、1億円のやりとりをしてやっと200万円の利益がでるイメージです。
他の総合商社との比較はIRから読み解く7大商社-業界分析を参照してください。

 

2. 三菱商事のそれぞれの事業グループを見る

どんな事業グループがあるのか

三菱商事では8つの事業ユニットにわかれています。
これらの情報はセグメント別情報に記載されています。

1.ビジネスサービス部門

三菱商事のIT戦略について、戦略・企画・開発・運用までをトータルで担当する部門。
IT戦略といっても大規模なシステム開発などが中心で、NRI(野村総合研究所)やNTTデータなどのSIerに近い(とはいっても開発ではなく、発注する側である)部門。

2.地球環境・インフラ事業グループ

「環境事業本部」「新エネルギー・電力事業本部」「インフラ事業本部」の3本部から構成され、電力・水・交通や、その他産業基盤となるインフラ分野においてビジネスを行う部門。
2013年までは社長直下にあった部署でもある。

クリーンエネルギー、水ビジネス、スマートシティなどのビジネスが該当する。

3.新産業金融グループ

2007年に始まった比較的新しい部署。
金融手法を駆使し、企業のアセットマネジメント、インフラ向け投資、企業のバイアウト投資から、リース、不動産開発、物流など幅広くビジネスを展開する。
商社のなかでも若干異色な部門でもあり、金融的手法を駆使して収益を上げるグループ。
(外資系金融などに興味がある人は親和性が高いかもしれません。)

4.エネルギー事業部

エネルギー資源を確保、安定供給を実現する部署。
地球環境、インフラグループと異なり、旧来型の化石燃料系のトレーディングを中心に行う部門である。

5.金属グループ

鉄鋼製品・鉄鋼原料、非鉄金属などの資源を確保、安定供給を行う部署。
旧来から存在する部署であり、トレーディングが大半を占める商社らしい部署。
子会社にメタルワンなどがある。

6.機械グループ

「産業機械」「船舶」「防衛・宇宙」「自動車」などの分野でビジネスを行う部署。
こちらの部署は調達よりも販売(輸出)・アフターサービス等が中心となる。

7.化学品グループ

汎用化学品分野(工業塩や肥料などの調達を中心に行う)、機能化学品分野(合成樹脂や電子材料などの販売を中心に行う)、ライフサイエンス分野(食品化学、医薬・農薬などを扱う)の3分野に於いて事業を展開。

8.生活産業グループ

食料、繊維、生活物資、ヘルスケア、流通・小売りなどの分野でビジネスを行うグループ。

グループごとの取り扱い商品・サービス、主要連結子会社

ではそれぞれのグループがどの様な商品・サービスを取り扱っているのかも見て行きましょう。

 

取扱商品又は
サービスの内容
主要な子会社 主要な関連会社等
地球環境・
インフラ事業
新エネルギー、海外電力、
水、重電機、鉄道、
プラント 他
三菱商事パワーシステムズ
三菱商事マシナリ
DIAMOND GENERATING CORPORATION
DIAMOND GENERATING ASIA
千代田化工建設
新産業
金融事業
アセットマネジメント、
バイアウト投資、リース、
不動産(開発・金融)、
物流 他
三菱商事ロジスティクス
三菱商事・ユービーエス・リアルティ
MCアビエーション・パートナーズ
DIAMOND REALTY INVESTMENTS
MC AVIATION FINANCIAL SERVICES (EUROPE)
三菱オートリース・ホールディング
三菱鉱石輸送
三菱UFJリース
エネルギー
事業
石油製品、炭素、
原油、LPG、LNG 他
三菱商事石油
PETRO-DIAMOND INC.
DIAMOND GAS RESOURCES
JAPAN AUSTRALIA LNG (MIMI)
BRUNEI LNG
金属 鉄鋼製品、石炭、
鉄鉱石、
非鉄金属地金・原料、
非鉄金属製品 他
メタルワン
ジエコ
MITSUBISHI DEVELOPMENT PTY
MC RESOURCE DEVELOPMENT
IRON ORE COMPANY OF CANADA
MOZAL
機械 産業機械、船舶・宇宙、
自動車 他
レンタルのニッケン
TRI PETCH ISUZU SALES
MCE BANK
THE COLT CAR COMPANY
KRAMA YUDHA TIGA BERLIAN MOTORS
化学品 石油化学製品、
合成繊維原料、肥料、
機能化学品、
合成樹脂原料・製品、
食品・飼料添加物、
医薬・農薬、
電子材料 他
三菱商事プラスチック
興人ホールディングス
エムシー・ファーティコム
三菱商事ケミカル
三菱商事ライフサイエンス
中央化学
MCフードスペシャリティーズ
サウディ石油化学
METANOL DE ORIENTE,METOR
PETRONAS CHEMICALS AROMATICS
EXPORTADORA DE SAL
生活産業 食料、繊維、
生活物資、ヘルスケア、
流通・小売 他
日本ケアサプライ
三菱食品
日本農産工業
東洋冷蔵
日本ケンタッキー・フライド・チキン
三菱商事建材
PRINCES
ALPAC FOREST PRODUCTS
ローソン
ライフコーポレーション
MITSUBISHI CEMENT
その他 財務、経理、人事、
総務関連、IT、保険 他
三菱商事フィナンシャルサービス
アイ・ティ・フロンティア
MITSUBISHI CORPORATION FINANCE
MC FINANCE & CONSULTING ASIA
MC FINANCE AUSTRALIA PTY
シグマクシス

 

グループごとの業績をみる

それぞれのセグメント別の業績などは以下のとおり。

三菱商事のセグメント別業績_2014

*一人あたり付加価値:付加価値≒売上総利益とし、連結の従業員数当たりで算出
**投資損益割合:収益に占める持分法による投資損益の割合([投資損益]/[収益])

 

従業員数

連結では生活産業、単体では「その他」セグメントの割合が大きい。
また、基本的に配属の割合は現状の組織構成の影響を受けやすいので、上記の人数割合≒配属確率と考えてよいでしょう。

よって、配属の可能性が高いのは
生活産業>金属>機械=化学品>エネルギー事業>新産業金融>地球環境・インフラ事業
といえるでしょう。

一人あたり付加価値

商社というと「規模の大きい仕事ができる」というイメージがありますが、ビジネス的に見ると規模の大きさよりも「その人が如何に付加価値を生み出したか」が重要になります。

そこで一人あたりの付加価値を見て行きましょう。
14年3月期の業績によると

一人あたりの生み出す付加価値が高い事業部は
エネルギー事業>新産業金融>機械>地球環境・インフラ事業>金属>生活産業>化学品
(簡易的に売上総利益≒付加価値として算出)

といえます。

※「地球環境・インフラ事業」は利益率は高いのですが投資損益の割合が高いため、「売上総利益≒付加価値」という定義だと付加価値が低く出てしまいます。

「事業投資型」と「トレーディング型」の事業

収益額は生活産業、当期純利益はエネルギー事業が大きな割合を占めていることがわかります。。
ここでセグメント別の利益率-投資損益割合を見てみよう。

三菱商事のセグメント別利益率-投資損益割合_2014

よく商社の事業は「トレーディングから事業投資へ」といわれていますが、13年まで社長直下の事業部であった地球環境・インフラ事業の収益率と投資損益割合の高さが際立ちます。

そして「新産業金融」「機械」「エネルギー事業」は徐々に事業投資型へシフトしていっていることがわかります。
一方、「化学品」「生活産業」「金属」は利益率、投資損益割合も低く、旧来のトレーディングをメインにビジネスを展開していることがわかります。

事業投資による収益割合の高い部署は
地球環境・インフラ事業>>新産業金融>機械>エネルギー事業>化学品>生活産業>金属

といえるでしょう。

3. 商社に入れば一生安泰か?

日系の大企業+高給取りのイメージのある総合商社ですが、商社に入れば一生安泰なのでしょうか?
有価証券報告書の従業員数から紐解いていきましょう。

再掲となりますが、三菱商事の業績推移とCFマトリクスをまずは見てみましょう

三菱商事の業績推移_2014 三菱商事のCFマトリクス_2014トレーディングを主体として事業を展開していた三菱商事は、2000年に大きく業績を悪化させ、減収(当期純利益は0%)となってしまいました。
CFにおいても営業CFがマイナス、投資CFがプラス(既存の資産を切り売りして収益を出している)状態に陥っていました。

後に三菱商事は業界で先んじてトレーディングから事業投資型の事業にビジネスを転換していくわけですが、ここで大きなリストラを行っています。

下記の表は1999年から2014年までの連結(グループ会社含む)・単体(三菱商事本体)の従業員数(≒正社員)・臨時雇用(≒派遣やパートなど)の推移を見てみましょう。

決算期 連結
従業員数
連結平均
臨時雇用
単体
従業員数
単体平均
臨時雇用
1999年 7,982
2000年 42,050 4,400 7,973 750
2001年 42,126 6,267 7,183 807
2002年 44,034 6,653 6,612 900
2003年 47,370 10,502 5,852 935
2004年 49,219 11,144 5,609 903
2005年 51,381 11,312 5,389 962
2006年 53,738 12,637 5,489 962
2007年 55,867 13,583 5,375 957
2008年 60,664 18,470 5,454 852
2009年 60,095 17,782 5,690 858
2010年 58,583 19,563 5,742 822
2011年 58,470 19,024 5,665 793
2012年 63,058 19,734 5,796 763
2013年 65,975 17,916 5,815 732
2014年 68,383 17,807 5,651 688

2000年に三菱商事単体に約8,000人いた正社員は2000年→2004年の4年間で2,600人減少しており、その代わり、臨時雇用者(≒派遣社員)が150人増えています。
この150人についてはおそらく一般職の事務の方々が「リストラ→派遣社員に置き換え」となったことが想像できますが、それでも残りの2,450人(2,600-150人)はどこに行ってしまったのでしょうか?

連結の従業員数をみると、2000年→2004年で7,000人以上増加しており、三菱商事本体からグループ会社に転籍(≠出向)となったことが推測できます
(※もちろんこの時期に事業投資型に転換したことにより、連結対象の企業が増えたことも連結従業員数の増加の原因と考えられます。)

ちなみに出向と転籍の違いとしては下記のものになります。

出向とは、一時的ないしは定年まで別の会社や団体に異動(配置転換)を行う形態である。

転籍とは、従業員を別の会社に異動させ、かつ、籍まで移すことである。出向者が定年間近であったり子会社の資本関係変更などのケースでは、出向者がそのまま出向先に転籍するケースも珍しくない。
wikipedia

三菱商事の社員として別の会社で働く状態を出向、三菱商事から別の会社に籍を移し働く状態が転籍になります。
籍を移すということは、報酬や待遇、福利厚生がその移った先の会社の水準に合わせることであり、必ずしも三菱商事の水準と同じわけではありません。

もちろんベンチャー企業などに比べれば三菱商事は、断然企業の安定性は高く、倒産リスクも少ないといえます。(おそらく三菱商事は日本が崩壊しない限り永久に存続するでしょう。)
ただし、企業が存続し続けることと、自分がその会社でビジネス人生を遂げられることは分けて考えなければいけません。

 

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